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最高裁判所第二小法廷 昭和48年(オ)544号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人和田栄一の上告理由について。

破産法七二条二号の債務消滅に関する行為とは、破産者の意思に基づく行為のみにかぎらず、債権者が同法七五条の強制執行としてした行為であつて破産者の財産をもつて債務を消滅させる効果を生ぜしめる場合を含むものと解すべきであり(当裁判所昭和三八年(オ)第九一六号同三九年七月二九日第二小法廷判決・裁判集民事七四号七七頁参照。)、この場合には、破産者が強制執行を受けるについて害意ある加功をしたことを必要としないものと解するのが相当である。原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の転付命令による本件保険金債権取得行為並びに保険金の受領行為が破産会社の支払停止後にされたものであつて、上告人は右行為当時、破産会社が支払停止の状態にあつたことを知つておるものと認められるというのであるから、上告人の本件保険金の受領行為が同法七五条、七二条二号による否認権行使の対象となる旨の原判決の判断は、正当として是認することができ、右認定判断の過程に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原判決を正解せず、かつ独自の見解を主張して、原判示を非難するにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田 豊)

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